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『虹色カナタ』 Image Story ep:03

どうやら、僕の不安は取り越し苦労に終わったみたいだ。
虹はまだ空に大きく架かっていたし、無事、街に行く大人も見つかって同行してくれることになった。
オマケに僕が街に出ることにブツブツ言い続けていた母さんが意外にもお弁当を作ってくれていたので、
「ピクニックみたい!」と、はしゃぐルミネを見ることもできた。

ただ、途中で少し不安になったのか、泣きはしないものの、いつしかルミネが今まで歩いて来た道を
何度も振り返るようになっていた。
だから、僕は少しかがんで、ルミネに小指をそっと差し出した。
けれど、ルミネは不思議そうな顔をして、僕の顔を見つめるだけ。
・・・あぁ、そうか。差し出した小指の意味が分からないんだ。

「大丈夫だよ、ちゃんと僕がいっしょにいるから。この小指は、約束なんだ」
「やくそく?」
「そう、約束。ルミネ、小指出してごらん」
「・・・こう?」
「そう。それで、こうやって小指を繋いだら、もう大丈夫!」
「だいじょうぶ?」
「うん。お父さんとお母さんに『虹のカケラ』、お土産に持って帰ろうね」
「うん!」

そういうと、僕の手・・・じゃなく、やっぱり服のすそを掴んで、ニッコリ笑ってみせた。
同行してくれた村のお兄さんは、そんな僕たちのやり取りを黙って、優しく見守っていてくれた。
それから、ワイワイ喋りながら歩いていたら、街に着くのはあっという間だった。
普段、一人で歩いて来るよりもずっと早い気がしたのは、きっとそれだけ楽しかったから。

街まで同行してくれたお兄さんとの別れ際、「くれぐれも明るいうちに帰るんだよ!」と
釘を刺された僕たち・・・とくにルミネは物珍しげに街の中をきょろきょろと見回していた。
きっと来るのは初めてか、そう何度もないのだろう。

色んなものに興味深々といった様子で、あちこちを走り回るので、はぐれてしまわないかと
心配になったけれど、ある怪しげな露店の前でピタリと立ちどまって、しゃがみ込んだ。

「どうした、ルミネ。なにかあった?」
「ねえ、コレ全部、ピカピカしてキレイねぇ」
「お、よく来たな、お嬢ちゃん!」
「お嬢ちゃんじゃないよ、ルミネだよ」
「ごめん、ごめん。ルミネちゃん、でいいのかな?」
「うん、そう!」

そう言うと満足してしまったのか、それとも飽きてしまったのか、今度は露店の向かいにある
花屋のおかみさんに色々と話しかけていた。困らせていないといいけど。
そう思いながら、僕も露店に並ぶ商品に目をうつした。そこには色とりどりの品物が並んでいて、
アクセサリーに興味のない僕でさえ、なんとなく惹かれてしまう、そんな独特の雰囲気があった。
そして、たくさん並んだ商品のその中に、僕はふと‘それ’を見つけてしまった。

「オジサン、あの・・・」
「ん、どうしたボウズ」
「これって、いくらかな?」

僕が指さしたものは、七色に輝く水晶のチャームだった。
見上げる空に虹はあるものの、根っこになど到底たどり着けないことは、分かりきっていた。
だけど、まさかこの街で、あの虹と同じ色の石に出逢えるなんて、きっと運命かもしれない。
数ある品物の中で、まるで引き寄せられるように、僕はその石を見つけたんだ。
オジサンは、僕の顔を見て満面の笑みを浮かべてから、少しだけ、いや、だいぶ自慢げに
嬉々としてこの宝石の話を始めた。

「これか。ボウズ、良い眼してるな!これはなぁ、滅多に採れないものすご~~く珍しい宝石でな、
どの大陸でも貴重なものなんだ。あまりにも珍しいってんで、最近じゃ、お守りとか、願いを叶えてくれる
チャームとしても、ものすごく人気があるんだ・・・っと、ほほぉ、そうか」
「・・・ん、なに?」
「おそろいのチャームなんて、ボウズもマセてるな」
「な、なにが?」
「だってお前さん、あそこにいる嬢ちゃんとひとつずつ、だろ?」
「あ、え、っと、べべ、べつに・・・その」
「隠すな、隠すな。大人は、なんでもわかっちゃうんだぞ」
「あ・・・でも、さ。あの」
「さっきからどうした?そわそわして。言いたいことがあるならハッキリ言ってごらんよ」

いくらか?という質問には答えてもらえていなかったけど、僕は既に値札の文字を見て固まっていた。
チャーム二個一組で、値札には1200の文字。他の品物の何倍もするくらい、高い金額だった。
僕のお小遣い入れにはいくら入ってたっけ・・・足りるだろうか。

「あの、オジサン、ちょ、ちょっと待ってて!!」
「お、おう」

オジサンは僕の謎の気迫に少し押されたのか、なにも言わずに黙って待っていてくれた。
僕はといえば、肩から下げた鞄をごそごそ漁り、小さな麻袋を開くと、急いでお金を数えはじめた。
そして、数え終わった頃、僕はすっかり、肩を落としてうなだれていた。
麻袋の中には、700しか入っていなかったから。
しかも、このお金のほとんどは「絵の具を買ってきてくれ」と父さんから預かった大切なお金だったし、
自分の小遣いと合わせても、とてもじゃないけど足りない額だった。

作品紹介

コミックマーケット81、リリースタイトル
『虹色カナタ』(Daisy Rock)のイメージ・ストーリー

イラスト&デザイン:日下部ハルカ

製作:2011年

佐々木 聡太郎

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