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『空のそらと、風のうた』~episode:12 -それぞれの思惑-

「おい、居たのか!!」
「いや、こっちには居ねぇ!あのガキめ、どこに消えやがった。地下牢付近に張りつかせて
おいた見回りにも連絡がつかんぞ」
「その上、当主様はあんなことになっちまうし……一体なにがどうなってるんだ!くそっ……。
おい、誰か。地下牢出入口の鍵を確認したか!!」
「あぁ、さっき確認した時には閉まっていたぜ。それにしても当主様のあの姿はさすがに
俺も堪えたぞ。あの残酷さと、無駄のない手口……当主様も相当に残忍な方だったが、
あれだけの目に遭ったとなると、少し哀れな気もするな」
「ところで……当主様が亡くなったってことは、あの“人形”も用済みになるのか?」
「さあな、欲しがるヤツはたくさんいるだろうが。そんなことより、ガキを探して締めあげるぞ!
おい、そこのお前、地下牢付近に見張りとして立ってろ。ガキがここに戻って来んとも限らん!!
しっかり待ち伏せしておけよ!」
「あぁ、これから仲間と共に向かう!」
「……お前達。首尾はどうだ」
「あ、旦那。当主様のこと――」
「その件、今だけは忘れろ。それよりも、とにかく急ぎヤツを探すのだ。必ず生かして捕えろ。
なるべく無傷でだ」
「無傷で……ですかい?」
「ヤツは俺が締めあげる。それとも……俺の獲物に手を出す、と?」
「い、いえ、滅相も……」
「先ほど鐘が五つ鳴ったばかりだ、そろそろ夜も開ける。鐘が六つ鳴る頃までにはヤツを確保し、
その後は屋敷内大広間にて集合、俺が行くまで待機とする、以上だ」
「へ、へい。しかし、もしかしたらあのガキ、当主様をころ――」
「聞こえなかったか。急げと言ったはずだ。無駄口を叩いている暇があったら、さっさと行け!」
「……はっ!」

それにしても、つい今しがたの出来事が、こうも早くに発覚してしまうとは。
それもほとんどの部下達に。……おかげで屋敷内がすっかり慌ただしくなってしまった。
あげく、当主のことまでヤツのせいになってしまうとは、とんだ誤算だ。
部下共にはヤツを捕え生かして連れて来いと命令はしたが、あの荒くれ共だ、状況如何では
結果がどう転ぶか、分からない。
やはり、誰より先に俺がヤツを見つけることが理想だろうな。早速、俺も動かなかければ。

「はぁっ、はぁ……っ、はぁ、はぁ。なんだって言うんだ。僕のことでは騒ぎになっていないと
思っていたけど、当主がどうとか言って襲いかかってきたぞ。一体どうなってるんだ」

僕はつい先頃出くわした見回り達に一方的に聞かされた身に覚えのない話に激しく困惑していた。
当主が亡くなっただのなんだのと息巻いていたようだ。
正直言って非常に気になる話ではあるが、それより今は、とにかくアウラを助けに行かなくては。
覚悟を決めると、先ほど気絶させた見回りから奪い取った銃を構え、奴らに向かって撃った。
足を狙って撃ったつもりだったが、撃つときに思わず目を瞑ったからなのか、撃ったときの
衝撃で弾が逸れたのか、見回り達には当たらず、地面から土埃が舞い上がっていた。
それでも、警戒と、足止めをさせるほどには抑止になったようだ。

「動くな。……次は、外さないっ!!」

……という単純なブラフにまで、あっさり引っかかってくれた。
本当は銃の扱いが下手過ぎて、地面に穴を開けただけなのだが、結果的にでも人殺しにならずに
済んだのは幸いだった。
しかし、僕が地下牢から逃げ出したことが知れた今、アウラ救出は、さらに至難の業となった。
もはや不可能に近いと言ってもいいかもしれないが……今、作戦を立て直している暇はない。
銃の弾数にも限りがある。さっき何発か無駄に撃ってしまったが、残りがどれくらいあるのか、
こんなものを扱ったことのない僕にはまるで分からなかった。
ただ、いざという時に弾切れでは困るのだ。これからはもっと慎重に使わなければ……。
慣れない手つきで銃を構え、警戒しながら、地下牢付近までたどりついたが、やはり予想どおり
すっかり警備が強化されてしまっている。
地下牢出入口の側に、二人の見張りが、僕にとって明らかに分が悪い武器を片手に、ギラギラと
血走った眼を周囲に走らせていた。

僕は、握りしめた銃に目を落とす。
これで闇雲に攻撃したところで、奴らに当たらなければ、その時はこちらが致命的な反撃を
食らうだろう。そして、当てる自信もない。
当たったとしても、銃声を聞きつけた他の者が駆けつけてくるかもしれない。
物陰に潜み、見張りをどうやって倒すか思案していると、不意に背後から聞き慣れた声がした。

「まったく、普通なら逃げ出した場所には戻ってこないものだがな……」
「……っ!!あ、アンタは!!」

振り向くと、あの男がいた。僕が声を荒げると、男が人差し指をそっと口に当て黙るよう促した。
そして、言葉の代わりに身ぶり手ぶりで、“場所を変えるぞ”といった動作をして見せる。
どうして捕まえない、いや、今なら即刻、それ以上のことをされても不思議ではないはずなのに。
……だが、いまここで逆らってもこの男にやられるか、地下牢前の見張りにやられるか、だ。

すでにさっさと背を向け、暗闇の中に消える男の背中を追い、僕もこっそりと急ぎ追いかけた。
懐には……いつでも使えるように、あの銃を忍ばせて。

「ロキ、ようやくお前を見つけたぞ……」
「こんなところにおびき寄せて、どういうつもりだ」
「お前もつくづく青いな……せっかくここから逃げられるよう計らってやったものを。
次は無いと警告したはず。命を粗末にするなとも忠告したはずだが」
「逃げられるように計らった……って、もしかしてあれのことか……!?」
「地下牢から抜け出す機会は与えた。だが、お前はそれを見事にふいにしてくれたらしいな」
「そうみたいだな。でも悪いけど、僕一人だけ逃げるわけにはいかなかったんだ」

口を動かしながらも、手にはしっかりと懐の銃を握り、引き金の位置を確認する。
元々、この男に勝てる気はまったくしない。だが、最悪の場合、ほんの少しでも一矢報いてやる。
心の中で静かに決意をすると、男の動きを少し足りとも見逃さないよう、視線を男から外さずに
じっと睨みつけた。

作品紹介

『ぬくもりのうた』(未発表)
詞のイメージ・ストーリー

製作:2012年

佐々木 聡太郎

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佐々木 聡太郎