/

ブラッドベリのように

森へ何かが やってくる
肩をすぼめた 木々のこずえが
ききなれぬ足音に ふるえている
枝葉はあせって
炎にまみれた トカゲを産み落とし
けものの耳にも 熱い息が吹きかかる

ただの南風、ではないんだな
若葉が萌えるだけ、ではないんだな
たまごを孵らせる、だけじゃないんだよ
そいつのせいで
つみとられる命も あるんだぞ

ついにそいつがあらわれた
どこのだれやら 見知らぬ顔で
うすもののむらさきの マントを脱ぐ
みがきこまれた
ステンレス仕立ての 手品師の手つきで
木肌に緑のキバを植える ツノたてる

彼はささやいた、ぼくの名はンン…
だれにも聞きとれぬ 名まえを告げる
木立はうっとりと 背伸び しなだれる
そいつのせいで
つみとられた命が またひとつ
    ★
そいつが放つ
まぶしさには 敵わない
南の風に
なでられるまま 立ちつくす
立ちつくす

年老いた ブラッドベリのように

作品紹介

コメント(0)

コメントを読むには、ログインが必要です。

作者の他の作品

海岸通りのコーヒーショップ

潮の香りがなつかしい
入り江を見わたす コーヒーショップ
昔のまんまの目印は
シッポがもげてるマーメイド

工藤 結衣

天才のさかな

1)
きみがクレヨンでかいてくれた魚は泳いでる
しっぽなんか なくっても
むなビレ はらビレ なくっても

工藤 結衣

横浜 ラストオーダー

たったいちどの
出会いにふるえて泣いた
おれの心に熱い
火を放って

工藤 結衣