虹を描いていた。
ただ、ひたすらにそうしていた。
そうすることで、あの日の『約束』が、いつも僕たちを繋いでいるような、そんな気がして。
だから、虹を描いていた。
それにしても、眩しいな。
夏がすぐそこまで来ているとはいえ、ジリジリと焼けつくような暑さはまだ早い気がする。
目をつむっても、手で顔を覆っても、手のひらを通り抜けた赤い光がまぶたの裏に浮かぶし、
カンバスにも太陽の光が当たって反射するので、とてもじゃないが見続けていられない。
「さすがに・・・無理か」
もうずいぶん長いこと虹の絵を描き続けているけど、未だに、あの日見た虹の色が出せない。
だから、もう一度、本当の虹を見たくて、いつもそれを待ちながら絵を描いているのだけど、
見上げる空は、これ以上ないくらいに晴れ渡っていて、雨が降る気配など、ほんの少しもない。
虹は、雨が降った後でなければ見られない。
そして、雨が降ったとしても、必ず見られるとも限らない。
そんなことは百も承知なのだけど。
そんなに出てきてくれないなら、こっちで作りますか。
僕は胸に下げていたペンダントを大事に取り出すと、太陽に向かってゆっくりかざした。
七色に光るその宝石は、眩しい光を吸い込んで、辺り一面に淡い虹色を作りだしてゆく。
僕は草の上に寝転ぶと、しばらくの間、その幻想的な光景をぼーっと眺めてから、
もう一度、そっと目をつむって、君のことを考える。
―――どうして??
君が旅立った頃は、そんなことばかり考えていたっけ。
あの頃の僕には、なにができたのだろう、とか。
どんなことを言えば、良かった?とか。
励ます?引きとめる?
でも、きっとそのどれもが違ったと思うし、言葉では、どうすることもできなかった気もする。
一緒に過ごした、あの長く楽しい時間でさえ、僕たちを繋ぎ止めておくには弱かったのだから。
少なくとも、あの頃は、そう思っていた。
なにも変わらず、そのままでもいいじゃないかと思った、つい口にも出して言ったこともあった。
だけど、いつからか君の目に、僕の姿だけじゃなく、色んなものが映っていることにも気づいていた。
僕を見ていても、それを通り越してその向こう側の、僕のものとは違う明日を見ていたんだろう。
どうして??
・・・なんて幼すぎる問いかけになんの意味もないことくらい、よく分かっているつもりだけど、
それでも、大人になった今でもやっぱり、そのことを考える時だけは、胸の奥がチクッとする。
この痛みは一生消えないのかもしれないけど、今ならそれも悪くないかなと思う。
僕たちが離れたのは、決して絆が弱かったからじゃなかった。
君のなかに強く強く叶えたい大切な願い事が生まれたからだと、今はそんなふうに思えているから。
ねえ、ルミネ。
君もまだ、見ているんだろう?
今よりもうんと、うんと、なにもかもが広く、大きく見えていたあの頃。
あの日、あの時に見た、空いっぱいに広がるパノラマの虹を―――。
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