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「藤壺」 「紅花藤(べにばなふじ)」

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(女義太夫)
いづれの御時にか。

桐壺の更衣となむいう人あれり。いと高貴な位にはあらねども、帝のご寵愛、深く、他に並びなし。しかし、この桐壺の更衣、年若くはありせども、病がちとなり、ついには御身、身罷りし。

帝の悲しみ深く、新しき妃、女御更衣をお召しになることなく、桐壺の更衣の亡き後に佳人なしとお嘆きになり給う。

ところが、先帝、すなわち帝の従兄弟に当たる人の第四の皇女は、優れし容貌(かたち)にて、桐壺の更衣に似たるという言葉ありて、入内させまゐらせ奉り給へり。

この宮は、藤壺と聞ゆ。げに御かたち有樣、あやしきまでぞ桐壺の更衣に覺え給へる。

「藤壺」

六つと違(たが)わぬ
光の君に恋しと
告げられ胸のうち

十四(じゅうし)で嫁ぎし
我が恋は、形もおぼろ、
朧雲(おぼろぐも)

子ども幼き戯(ざ)れ言と
流す笹舟水面の渦に
皆みな捨てなば、

心に影差す
春はよし、影の薄き
色は薄紅(うすくれない)

黒々と来す
秋は悪(あ)し、影の強き
色いろ暗し

若き光の君に逢い、
語れば心の泉の
澄みしこと

とくとく
とくとく

水こんこんと
湧きて出でて、
桐の香りを

一度(ひとたび)忘るる
不義の恋
褥(しとね)重ね重ねて

恋は積もりし花霞(はながすみ)、
花屑(はなくず)、
花の一片(ひとひら)が

雨雨(あめあめ)
雨雨(あめあめ)

帝心を慮(おもんばか)れば
なお恥ずかしき
恋心

桐の香りせぬ
我が髪を櫛けずるたび
闇深く

頬(つらつ)きを
打つ花欠片(はなかけら)
匂う香りは

桐か藤か
桐か藤か

六つと違(たが)わぬ
光の君に恋しと
告げられ胸のうち

十四(じゅうし)で嫁ぎし
我が恋は、形もおぼろ、
朧雲(おぼろぐも)

子ども幼き戯れ言と
流す笹舟水面の渦に
皆みな捨てなば、

皆みな捨てなば、

風が吹く。
簾が音を立てて、
揺れる。

藤壺 光の君様…

先人、額田王詠めり。君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く。

藤壺 冷たくなさらないでくださりませ。

藤壺 冷たくいたし申し上げているのは、
私(わたくし)。わかり申しております。なれど、冷たくなさらないでくださりませ。ううう…。(啜り泣き)

「紅花藤(べにばなふじ)」

我が恋を色何色と問わるれば
色は、藤色、紅き色、
燃ゆるる血染めの紅き藤色
吐きつ、恋しつ、想い色、

隠せし恋は、紅花で染め、
紅裏(もみうら)にせし、
衣(ころも)返せば、内裏(うちうら)は
炎揺れにし、ゆらゆらと

隠せし、藤は、紅色(あかいろ)に燃ゆ
花氷、冷たき音は連ねども、
内裏(うちうら)は、
たぎりし血の色に染む

合わせし、素肌、二(ふた)の手で
掬いし灰の花殻(はながら)は、
積もりし想いと
積もりし血潮、

惹いては返す臙脂(えんじ)色
命鈴鳴り、ころころと
心恋哭(な)き、ねびゆきし
愛はしろしろ涙に消ゆる

作品紹介

古典舞踊の作曲してくださる方、探しています。

源氏物語から、
構想を得た、
新作の「藤壷」を
書きましたので、

古典を作曲してくださる方、
探しています。
長唄ではなく、大和楽ではないか?
と言われているのですが、
舞台化したい気持ちを持っています。
つまり、舞踊家さんに踊って
いただくということです。

吉本 里佳

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