坂道上がった
その屋敷には
いつも静かで
人っけがないんだ
大きな門は
閉ざされたまま
庭の欅(けやき)が
塀越しに見える
風見鶏 とんがり屋根に くるくるまわる
風見鶏 なにを見つめる 遥か向こうか
お化けが出るぞ
皆(みな)は、はやし立て
駆けて通れば
なお気になるのさ
大きな門が
ある日、開いていた
覗き見たらば
荒れて朽ちた庭
蔦(つた)が絡まった
ベンチに座って
屋根を見つめる
独りおばあさん
風見鶏 赤いお屋根で くるくるまわる
風見鶏 錆び付いた音 きこきこ啼いて
まあるい背中
空を見ていたか
挨拶もなく
僕は立ち去った
※
ある夏のこと
大きな門には
売家(うりや)の紙が
張られていたのさ
そしてほどなく
おばさんは逝った
あの風見鶏は
もう無くなっていた
あの風見鶏は
もう無くなっていたのさ
作品紹介
ぺん
井高 直子コメント(2)
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